地震体験車
土曜日の昼下がり、国道沿いの消防署の前を通り過ぎると、消防士さんたちが、なにやら手作りのプラカードを行き交う車に向けて振っている。
振り返ると、「地震体験」と読めた。
そう言えば、地震体験車らしい車両も視界に入ったな。
引き返して、体験させてもらう。
事前に地震体験車が来ることを知っていた方々は、とっくに体験を終えたのだろう。消防士さんたちの他には、お爺さんがお一人いただけだった。
しかも、彼はすでに体験を終えて帰るところだったらしい。地震体験車は貸し切り状態となった。
地震体験車は最新モデルで、過去に起こった地震や、将来起こるだろう地震までシミュレートできるものだった。
油圧と電動モーターで2畳ほどの体験スペースの箱を揺らすお馴染みの仕組みだが、40型ほどのLCDディスプレイにCGの街路が表示され、再現された振動と衝撃に合わせて、街が倒壊して行く様もCGで表示される。
もちろん、震度も別にデジタル表示されるようになっていた。
トラックの荷台に置かれた体験スペースには、シミュレーターへ直接固定されたスチールフレームのテーブルが中央に置かれ、テーブルを挟んで折りたたみ式のスチールチェアが2脚置かれている。
定員は4名だが、今日はそれほど多くの来場はなかったようだ。
はじめに2007年7月の新潟県中越沖地震を体験した。
約1分間に周波数の低い縦揺れと横揺れが3セット続く。「ずぅんずぅんずぅん」と縦揺れが来て、「ゆっさゆっさゆっさ」と横揺れが収まったと思ったら、再びずぅんずぅんずぅん、ゆっさゆっさゆっさ、ずぅんずぅんずぅん、ゆっさゆっさゆっさって感じ。
それほどの強い衝撃ではなかった。しかし、何度も揺れが続くことで被害が拡大した。
次に1995年1月の兵庫県南部地震。テレビ中継で見た被害状況は、いまだ鮮明に記憶に残る。
「ずず、どぉん」と強い突き上げの後、「ゆさ、さっ」と大きな横揺れ。一気に強度が足りなかった建物を倒壊させた。
中越沖地震の様な揺れ方なら、火の元を消すなどの対処も可能かも知れないが、兵庫県南部地震の様な直下型の強い縦揺れに襲われては、昼間であっても対処の仕様はないだろう。
そして、近い将来発生するものと予測されている東海地震のシミュレーションを体験した。
どういった方法で算出されたものかは知れないが、上記二つの大地震の体験が消し飛んでしまう恐ろしい揺れだった。
「ドドドドドドドド」という震度7のとても強くて高い周波数の縦揺れ、そしてすぐに「ゆさゆさゆさゆさゆさゆさ」と強い横揺れに襲われる。
収まったと思ったら、再びドドドドドドドド、ゆさゆさゆさゆさゆさゆさ。
ここ数年、公共施設におこなわれている耐震補強工事でも間に合うのだろうか?と不安になるような揺れ方だった。
マグニチュードはある程度予測できるかも知れないが、震源の位置と地表の複雑な構造によって、実際の震度は大きく変わってこよう。
シミュレーションは、最悪の結果を体験させるように調整されているとは思う。
それにしても、予想外の揺れ方だ。あんな地震に襲われたら、被害地域の人々はかなり厳しい運命を背負うことになると、とても不安になる。その予想被害地域で暮らしている。
一昨日の22日、ニュージーランドで地震が発生して大きな被害を出している。
被害に遭ったクライストチャーチは、NHKの「世界ふれあい街歩き」でも紹介されたことがある英国式の古い家並みが残る美しい旧市街だった。
観光資源である町並みはほとんど倒壊し、多くの方々がいまだに瓦礫の中で救助を待っている。
彼らが無事に救出されることを祈りたい。
今回の地震は、昨年9月にニュージーランドの同じ断層で発生したマグニチュード7.0という大きな地震の最大余震で、マグニチュードは6.3だったそうだ。
エネルギーレベルこそ低いものの、昨年の本震よりも震源が町に近く地表に近い場所で発生したため、震度6強という揺れが襲ったようだ。しかも、クライストチャーチは河岸の町で、地盤の弱さも被害の大きさにつながったとみられている。
ニュースによると、兵庫県南部地震に似た揺れだったそうだ。お昼時にかかわらず、火災の発生は少なかったらしいのが不幸中の幸いか。
それにしても、ニュージーランドは日本同様の地震列島として知られている。
耐震への関心は決して低くないはずだ。その割りに、築40~50年程度の鉄筋コンクリートの建物の倒壊が目立つ。
新しい耐震基準で作られた最近の建物は倒壊していないそうだ。日本とは違い、耐震基準の改正前に建てられた建築物を補強工事するという措置が遅れていたと思われる。
タダで耐震補強の工事ができるわけはなく、必要であると理解していても、いつ起こるとは知れない地震に対する投資の優先順位はどうしても低くなってしまうだろう。
昨年のM7の本震では大した被害が無かったクライストチャーチでは、次に起こるだろう大きな地震はずいぶん先の事と予想されていただろうし。
まさか、その余震でこれほどの大きな被害をもたらすとは。不謹慎ながら大自然の驚異として評価し、今後の地震対策に勘案されることだろう。
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