上郷の鶏足院の北から一旦トンネルにして、テニスプラザあたりで再び地上に出して飯田線の西側を通すという感じだろうか?
飯田駅西側はJR東海や中部電力、そして飯田市の所有地が多く、収用は意外に容易かも知れない。
高羽町にある労働金庫が中央通り3丁目の西友跡地へ移転するのも、関係していそうだ。
リニア中間駅がどの程度コンパクトに在来線駅と併設できるのかは知識を持ち合わせないが、長さ1km、幅40mの用地は十分に確保でき、意外に地上駅でもJR飯田線飯田駅に併設することは可能なように思われる。
道路はすでに県道15号線から延伸された片側2車線のフルーツラインがあり、中央自動車道座光寺PAへスマートICを設置すれば、フルーツラインを利用して10分程度で中央自動車道へ直結する。
フルーツラインは育良町まで延伸されて国道256号線と接続し、更にアップルロード(国道153号線)飯田IC東交差点まで繋がる予定で、工事は松川に掛かる橋梁と鼎切石区間(羽場大瀬木線)を残すのみ。完成すれば、飯田駅と中央道飯田ICとの接続も10分未満になるだろう。
パーク・アンド・ライドのニーズに対応するための駐車場は、飯田市立の東中学校を移転させて跡地を収用することで確保か。
少子化により各学年1クラスとなってしまった市立の追手町小学校を同規模の浜井場小学校へ統合し、文化財である追手町小学校の施設へ東中学を移転させるのが合理的と思われる。
歴史的流れを踏まえるなら、浜井場小学校を追手町小へ統合し、浜井場小とそれに隣接する風越公園を新しい東中学の用地へ当てるのが妥当かも知れない。
さて、JR飯田線の飯田駅へリニア中央新幹線の中間駅を併設する際にポイントとなる用地と交通の利便性、そしてパーク・アンド・ライドに要求される駐車場用地の確保という点はクリアできそうだ。
では、デメリットを見てみよう。最も現実的な問題は、在来線駅の併設は単独駅に比べて建設費が増すことにある。
在来線の運行を担保しつつ軌道や新駅の工事を進めるための費用増はもちろんのこと、駅舎も含めそっくり在来線飯田駅の設備改良を行う必要がある。
新しい飯田駅の北口はほとんど桜町駅と変わらない場所に来るだろうことから、桜町駅は廃駅にできるとしても、数億から十数億円数十億円のコスト高が見込まれそうだ。
次に公害対策だろうか?
1千億円を超えると言われる地下駅の建設費用を負担できるほどの経済力は、飯田下伊那地方はおろか長野県でさえ無いだろう。
地上駅としてJR東海へ要望しなくては、検討の余地がない。当然、駅周辺の軌道は明かり区間となる。
中間駅である飯田駅への停車は、その利用予測からかなり絞られる。検索エンジンでリニア新幹線のダイヤ予想を探してみると、直通が15分おき、各駅停車が1時間おきというものがある。
ラッシュ時の増発を無視しても、上下線それぞれ15分おきに時速数百kmの超高速列車が市街地の真ん中を通過してゆく。
騒音、そして、超伝導電磁石が発生する電磁場に対する健康被害の懸念。
また、喬木村から上郷に掛かるだろう高架橋、そして白山町から松川に掛かる高架橋が落とす日陰。
さらに、事故が発生した際の市街への影響への不安。
河岸段丘上の狭小な平地(緩傾斜地)に密集した街区と、その中心となっているローカル駅にリニア新幹線中間駅を併設させるデメリットは、これら公害への住民の懸念に集約されるように思われる。
JR飯田線飯田駅へリニア中間駅を併設するメリットは、この提案を推進する一派が主張するように、中間駅に必要とされる道路などのインフラを既存の設備でまかなえるというものだ。具体例は先に挙げた。
市街地を収用することになるが、JR東海や飯田市、そして中部電力などが大口の地権者である土地を活用することにより、郊外へ中間駅を設置する場合に比べて収用の困難さや費用は大して変わらないと見積もられる。
現在のJR飯田駅に西口は無い。飯田駅は東側にのみ玄関口があり、商店街は東へのみ広がっている。
西側へのアクセスは、東口からの地下歩道による。そのため、飯田駅の東側は住宅街となっている。
飯田駅西側を通るフルーツラインを中間駅へのアクセス道路とすることで、大規模駐車場もフルーツラインに沿った西側へ作られるだろう。
そして、新幹線中間駅の併設により新設されるだろう西口こそが飯田駅の玄関口となる。
フルーツライン沿線は、飯田駅周辺に大規模店舗が出店する余地を多く残している。
仮に現飯田駅がリニア中間駅も併設できることになれば、周辺再開発において、駅の東商業区と西商業区の格差をいかに抑えるかがテーマとなる。
ところで、JR東海は、仮に飯田市周辺へリニア中間駅を設置するとしても、飯田線の高速化は図らないと明言している。
JR東海としては、長野県内の中央本線駅などからリニア中間駅へのアクセスは、中央道を利用する高速バスによって提供したいとする。
JR飯田駅の東側に広がる従来の商業区がリニア中間駅併設による受益を望むならば、飯田駅へ接続することになるJRバスをはじめ、従来の各社高速バスが利用するバスターミナルは、現在同様に駅東側に設置しなければならない。
自家用車でのアクセスが西口ならば、公共交通機関でのアクセスは東口という構造を実現する必要がある。
それにしてもJR東海にして高速化は図らない、と言うか不可能とさえ明言されよう飯田線の飯田駅にリニア中間駅を併設して欲しいなんて、地元の一部地権者による利益誘導以外の何ものでもないという批判は当然にあるだろう。
しかも、JR飯田駅周辺の市街区を形成する土地は、東に約1.5km平方の平坦地(厳密には緩斜面)、西側は緩やかに山へと続く斜面であって、その地形を南は松川、そして北は野底川が切り取っているという狭小なものだ。
ところが、この地形的問題点は、そのままコンパクトシティ実現の動機付けになる。
実は既に文化的な施設の箱ものは、この狭い街区に揃っている。
劇場や大小の公会堂、図書館、最新のプラネタリウムを持つ博物館や考古学研究所、複数の美術館、コミュニティセンター、複数の映画館、そして衰退しつつあるものの多様な商業区。
さらに多くの公園とりんご並木や桜並木といった美しい街路が整備されている。
多くの地方都市同様に人口の空洞化が進んでいるJR飯田駅周辺市街区は、徒歩圏内にちょっとした地方都市のインフラがすべて揃っているのだ。
この環境に、飯田駅から70分で品川へ出られる、25分で名古屋駅へなんて付加価値が加われば、都会からの富裕層が終の棲家として移住するに足る都市へ化けると考えられる。
また、片側2車線のフルーツライン(県道15号線)に隣接することで、大規模施設の誘致も郊外型中間駅同様のキャパシティを確保できるだろう。
中間駅を郊外へ設置した場合、リニアで70分乗れば東京へ出られるにもかかわらず、リニア駅から現JR飯田駅まで公共交通機関で20分なんてことが予想される。それでは、富裕層の流入は鈍ろう。
郊外型の中間駅では、ちょうど東海道新幹線の岐阜羽島駅の様に、しばらくはパーク・アンド・ライドを中心とした利用がメインとなり、駅周辺に大型店舗の出店や企業などの誘致が期待できるものの、街区の発展は将来的な雇用の増進が牽引するだけにとどまると思われる。
飯田駅併設では、既存の市街への人口流入が早期に期待でき、さらに飯田線が街区の拡大を促進するだろう。
県道15号線によって、隣接町村への利益誘導も大いに期待できる。
特に中央道の座光寺PAへスマートICが設置されれば、高森町はフルーツラインに加えてハーモニックロードの付加価値を高めることができるだろう。
飯田駅へリニア中間駅を併設するという構想は、長野県内の人口を南へ傾斜させるということではなく、都会から長野県へ富裕人口を流入させながら飯田市周辺の文化都市としての色彩を鮮明として、中北信同様に長野県の財政を支える新しい基盤とさせる可能性に満ちているのではなかろうか。
東北地方太平洋沖地震による震災からの復興、現在も進行中の福島第一原子力発電所放射能漏れ事故と、それにともなう脱原発の動きによる電力不足問題。
未解決の課題が山積する日本の現状において、中央リニア新幹線の一中間駅について考察するのは滑稽なことかも知れないが、以前の考えを改にして思いつきを書き留めた次第だ。