自由雲台とアルカスイス互換L型ブラケット
35年前に購入したスリックのバル自由雲台を使ってきたが、レバーで固定すると構図が動いてしまう不具合がある。
バル自由雲台は200mm程度までのレンズを付けた35mm一眼レフカメラを固定するのに最適な大きさの中型雲台で、星の写真を撮る際の機材として当時から定番の品物だった。
中一の時に自作したクーデ式のポータブル赤道儀用に2つ購入した内の一台で、上京する際に持参したものだ。
もう一台のバル自由雲台は、実家の改築時にポタ赤と一緒にどこかへ紛失してしまった。
最近の雲台のトレンドは、ドイツのARCA-SWISS(アルカスイス)が開発したクイックリリースプレートと互換性をもつアリミゾ・アリミゾガタを搭載した新興メーカー製品のようだ。
とくにSIRUI(シルイ)やVANGUARD(ヴァンガード)、BENRO(ベンロ)といった、中国メーカーの製品が高性能かつ安価と聞いた。
オリジナリティが希薄で低品質という理由による中国製品のバッシングを巷ではよく目にするが、かの国は広く多様だ。
機械式時計、オーディオアンプやスピーカー、鉄道模型やフィルムカメラといった趣味性の高い製品メーカーには、創業時から意欲的な仕様で品質も十分なものを低価格で提供して話題になるブランドも多い。
購入したのはSIRUI G-10というモデルで、シルイのラインナップでは一番小さなマグネシウム製の自由雲台。
外観サイズはバル自由雲台よりほんのわずか小さい程度だが、倍以上の耐荷重がある。
G-10はパン軸が独立していて、パノラマ撮影用に角度メモリも振られている。
ボールヘッドの摩擦抵抗を増減させるツマミもあって、載せるカメラの重さによってツマミを調整することで、動きの固さを簡単に最適化できる。
肝心のボールヘッドの動きはとてもスムーズで、固定は迅速かつ堅牢。
一番大きなツマミが固定用。軽く締めるだけで、十分な固定力が発揮される。
ボールヘッド固定時の画面シフトはゼロではないが、35年前のバル自由雲台に比べればかなり小さい。
パン軸に関してはガタがゼロと言っても良いほどの精度で、固定時のシフトは全く気にならない。
ちなみに、バル自由雲台はワンレバーですべての角度が解放されるが、SIRUIの自由雲台は90度の切り欠きの位置がパン軸に依存するため、厳密には旋回軸に自由雲台を載せた構造となっている。
そのため、ある角度以上構図をチルトさせる必要がある場合は、同時にパン軸も解放させる必要があり、2アクション操作となる。
極軸と並行に雲台を固定するタイプのポータブル赤道儀では、パン軸が独立していた方が使いやすい。
ボールヘッドの動きの固さを調整できるし、精度も高く堅牢、それでいて軽量。
これが350元というのだから恐れ入る。
製品に対する情熱と明確な経営理念をもったメーカーは、どこの国にも興るものなのだろう。
なお、中国メーカーの雲台や三脚は、ラインナップを欧州メーカーに倣っているため、ネジは大ネジと呼ばれるU3/8インチネジが一般的だ。
日本製品はカメラ本体のネジと同様に、小ネジと呼ばれるU1/4インチネジが多い。
こうもり傘の石突きを外すと、U1/4インチネジが現れたりする。傘を一脚代わりに使うなんて人は見かけないけど。
そんな訳で、SIRUI G-10も、中型雲台ながら三脚取り付け部はU3/8インチネジになっている。
日本製の三脚と組み合わせる場合、U1/4インチネジをU3/8インチネジへ変換する小物が必要な場合がある。
さて、せっかくアルカスイス互換のアリミゾを採用した雲台にしたので、カメラにL字型のアリガタブラケットを付けて、縦横構図の切替をやりやすいようにした。
この種のプレートは、Really Right Stuff(リアリー・ライト・スタッフ)のカメラ機種別に設計された製品が有名だ。
残念ながらペンタックスK-r用にはリリースされていないため、比較的安価な汎用品Desmond L型クイックリリースプレート DAL-1という製品を使ってみた。
この種のプレートとカメラとの接合は、カメラ三脚取り付け用のネジ穴ひとつで行う。
そのため、カメラ機種別の専用品が意味を持つ。
L字型プレート接合面をカメラの外観フォルムにぴったり合わせて造形することで、たった一つのボルトだけでカメラと一体化し、カメラ本体を捩じってもプレートが緩んでしまうことが無い。
汎用プレートをカメラに一体化させることは、ほとんど不可能だ。
DAL-1の場合、底部接合面がフラットに見えても、実際にはL字角に0.5mmほどの段差がある。
この段差のため、L字立ちあがり部をカメラの側面にぴったりと付けて固定しようとすると、底部にこの段差分だけの浮きが生じる。
汎用なために固定ボルトが左右にスライドできる構造もわざわいし、L字プレートが固定ボルトに対して捩じられると、すぐにスライドできる方向へずれて回転してしまう。
これら問題の対処として、底部の段差を埋めるように1mm厚のゴムシートを挿入した。
写真右がゴムシートを挟んだ状態。
固定ボルトのねじ込みはコインで行う。六角穴付きボルトでないのが残念だ。
ペンタックスK-rとDAL-1との相性はなかなかのもので、電池蓋にも干渉せず、赤外線通信用の窓も機能する。
ゴムシートを挿入したことで、捩じる方向に力が加わっても実用上問題がない程度まで緩みにくくなった。
なお、Desmond L型クイックリリースプレートDAL-1は、アルカスイス互換のアリガタとしては幅が狭い部類らしく、一部のアリミゾでは固定しきれない場合がある。
SIRUI製のアルカスイス互換アリミゾでは、問題なく固定可能だった。
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