日常を平静にすごす
3月11日午後2時46分に東北地方から北関東の太平洋岸を襲った大地震、そして大津波から10日が経過した。
被災された方々を思うと、胸が張り裂けそうな日々が続いている。
その後の連鎖地震で長野県では栄村が大きな被害を被っている。
東海地震や南海地震が連鎖発生するかも知れないというワイドショーの指摘を真に受けて、動揺する市民もいた。15日の夜に富士宮市に被害をもたらした地震で、その心配を裏付けるように思ってしまった人々も多かったかも知れない。
それでも、治安が乱れることなど一切なく、被災を免れた地域では平常な日々が続いている。
長野県の大部分の物流は関東に依存しているため、ガソリンや保存食品、電池やトイレットペーパーといった商品の在庫が需要に追いつかない状況に陥ってしまった。
オイルショック時に都市で起こったような物の奪い合いのようなことは一切発生していないものの、ガソリンや灯油、トイレットペーパーなどは販売制限をして需要調整を行っている。
関東同様に、今週には物流も安定して、販売制限をする必要もなくなるだろう。
電気は中部電力管内なので、まったく心配はない。各家庭はこの機会に積極的に節電しているだろうが、そうでなくても十分な電力が供給されている。
福島第一原子力発電所で発生中の放射能漏れ事故の影響もあって、自宅へ戻れる見込みのない被災者の方々を当地の自治体も受け入れている。
フランスや中国などは日本滞在中の自国民に対して帰国勧告を出しているようだが、これは放射線による健康被害を危惧しての対応ではなく、日本の治安がひどく乱れてしまった場合を想定しての対処であろう。
専門知識の無さにつけ込んで、やれ核爆発が起こるなどのデマを流す輩がいるのはとても悲しいことだ。
原子力発電で使用されている核燃料は、そこへ巨大隕石でも落ちない限り爆発反応は起こらない。
今回4つの原子力発電所で爆発現象が確認されている。そのうちの3つは燃料棒の被覆管として使用されているジルカロイが冷却不足により高温状態にさらされ、主成分であるジルコニウムが冷却水と反応して急速に酸化、還元された水から発生した大量の水素が大気中の酸素と酸化反応した爆発現象。これが水素爆発だ。
2号炉の爆発音は、原子炉格納容器に内側から急激な圧力が発生し、下部のサプレッションチェンバーと呼ばれる冷却された水蒸気が水として貯まるプールの弱い部分がパンクした際に発生したものと考えられている。
爆発前に3気圧あったサプレッションチェンバーの圧力が、大気圧にまで落ちてしまっていることからも、ほぼ間違えないとの見解だ。
政府、東京電力、自衛隊、警察庁、消防庁、原子力発電所の関係メーカー、そして研究者たちが持ちうるすべての力を振り絞って、福島第一原発で進行中の事態の収拾にあたっている。
複数の原子力発電施設が同時に大きな被害を被るような事故は、過去に例がない。
しかし、対応が後手後手になってはいるものの、各地の環境放射線量には悲劇的な上昇は見られず、福島第一発電所は爆発的な温度上昇も放射線の上昇も抑えられている。
放水によって温度上昇を抑えるという処置は、今後何ヶ月にも渡って実施する必要があることだろう。
しかし、福島第一発電所施設への電力の回復を境に使用済み燃料プールの冷却装置、そして肝心の炉心冷却装置の復旧も急速に進むだろうと思われる。
この十日間、大災害を描く映画では普通に起こるものとされた群衆のパニックは一切報道されていない。
被災地の様子を紹介するニュース映像、そして諸外国の反応、被災地からいらっしゃった人からの直接のお話しの中にも、治安が大きく乱れているという話題は一切ない。
むしろ、この困難な状況の中、震災前と変わらず秩序が守られ、世界一平和な国の一つとして評価されてきた日本の治安も、今も変わらないということを世界が理解しつつある。
高い治安が維持されていくのなら、原発の状況如何にかかわらず、今後の復興もスムースに進む。
ぼくらにできることは、お小遣いを赤十字の義捐金へ投じたり、支援物資を地元自治体の受け付け窓口へ持って行くのと同時に、普段の生活を今まで通りに続けることだ。
東京電力、東北電力管内の電力不足や災害復旧支援のための人手不足に影響を与えないのなら、予定されている各種イベントも、予定通りに実施すべきだと思う。
喪に服するかのように何もしないというのは、自己満足でしかないと思う。明日からは、震災前の平常を取り戻し、今まで通りにやるべきことをこなしてゆくことが、多くの普通の人々の最良の対応と思うのだ。
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