アカウミガメの放流会
一般には、夏休み最後の土曜日になるのかな。
先週末、長女が入っている科学クラブのバス旅行で浜岡の原子力発電所と浜松の中田島砂丘へ行ってきた。
中田島砂丘では、孵化したアカウミガメの放流を体験。
映像はその時の様子。
生まれたばかりのウミガメの子は、手のひらに載せると反射的に歩き出して落ちてしまう。
そのため、映像のように持ったり、甲羅を左右からつまんだりして持つ。手足が地面から離れていると、海の中と感じて泳ぎ出す。
時刻は午後三時。浜松気象台の観測値は33度だったらしいが、砂浜では40度近い暑さを感じた。
湿度は比較的低く、風が心地良かったのは幸いだった。
北太平洋のアカウミガメは、日本の海岸でのみ繁殖する。
そして、約20年かけて北太平洋を一周して、5月下旬から9月上旬までに日本の太平洋岸で産卵する。
アメリカ西海岸などでもアカウミガメは見られるが、若い個体ばかりなのだそうだ。
ウミガメは夜間に浜へ上がり、後ろ足で砂浜を掘って60cmほどの穴を作り、そこへ平均して110個ほどの卵を生む。
しかも、一つの個体が幾晩かにわたって産卵を繰り返す。
静岡県では工業地など開発による砂浜の減少や、バブル期に4輪駆動車などで浜へ入って海遊びをする人々が急増し、産卵したウミガメの卵が踏みつぶされたり、轍で親ガメが動けなくなったり、孵化した仔ガメが轍で海へ出られなくなるといった問題が深刻化して、一般立入禁止の保護区域を作ったり、早朝、卵を掘り出して安全な場所へ埋め戻すなどの保護活動が行われるようになった。
そんな中、孵化した子ガメを放流するイベントを行って、保護の啓蒙に役立てようと考えたのだろう。
仔ガメに接するのはほんの僅かな時間だが、海へ向かって懸命に浜を駆ける姿はなんとも愛らしく、無事に立派な親ガメへと成長して、再びこの浜へ戻ってきて欲しいと願わずにはいられない。
穿った見方をすれば、仔ガメは本来、日没後に砂から這い出て海へと向かう。
夏の日射しや砂浜の温度による消耗、海鳥に見つけられる危険を考えれば、親ガメが夜間に産卵するように、仔ガメも夜間に海へと船出するのは当然だ。
ところが、放流したのは最も気温が高くなる午後の三時。カモメなどが飛来することは無かったし、波打ち際の砂が濡れた場所まで近づいてから放したとはいえ、夜よりも体力を消耗したことだろう。
子ガメが海を目指せるのは、夜間、海の方が明るく感じるからなのだそうだ。
星を見る時、街の灯りが邪魔をする。光害と言うが、海を目指す子ガメにとっても方向を惑わす。だから、産卵地に都市が近い浜松では、人の手で放流することを保護の一環としているとも主催者は説明していた。
子ガメ一匹の放流につき、主催者側へ500円の協賛金を支払っているようだ。
放流時間に関しては、多分に参加者と主催者の都合が優先しているような気がしてならない。
遠州灘海岸はところどころに強い離岸流があり、毎年多くの死者を出す。そのため、この日の放流会でも、波打ち際までは行かないようにと強く釘を刺された。
夜間に放流会を開催したら、参加者への危険が増えてしまう。主催者のリスクも大きくなる。バスツアーに組み込むのも難しくなるだろう。
問題は確かにある。
しかし、今のところ放流会を含めた保護活動によってアカウミガメが減ったという事実はない。
野暮を言えば、保護活動において得られたお金の流れはどうなっているのだろう?という観点で検証すると本当の問題が浮き彫りになると思われる。
静岡県では、アカウミガメは天然記念物に指定されているため捕獲や卵の採取が禁じられている。
保護活動は特定のNPO法人へ委託され、税金から委託料が支払われている。他に補助金も受けているかも知れない。
NPO法人は放流会で集める協賛金の他、活動資金を集める名目でグッズ販売なども行っている。
野暮が過ぎた。イベント自体は、短時間にして生き物を慈しみむ気持ちが沸き立つ素敵なものだった。
娘も大喜びだったし、参加者全員の評判も良かった。実際、ウミガメ放流が組まれたバスツアーはとても人気が高いらしい。
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