和田サイクル本
ラピュータ社からこの秋刊行予定の『和田サイクルがすすめる小径自転車の楽しみと改造テクニック(仮題)』という単行本の取材を受けた。8月12日のことだ。この記事はその日の夜に書いた。尚、写真は後日行われた方の取材の模様。
当ブログでもよく登場する東京都杉並区桃井の和田サイクルさんは、「日本一小径車が売れてしまう老舗自転車店」で、「小径車の聖地」と呼ばれて久しい。
にもかかわらず、驕りも衒いもなく、粋な江戸っ子の和田さんとその人柄を映すスタッフたちがてきぱきと仕事を進める店内は、自転車好きにとって居心地の良い雰囲気に満ちている。
和田サイクルさんの魅力語りは刊行される本に譲るとして、和田サイクル発の小径車オーナーの一人として紹介してくださったらしい。
車種別に取材できそうなカスタマーをピックアップされた様なので、キャリーミーオーナーで適当なのと白羽の矢が立ったのだろう。
和田サイクル本は、和田さんご自身が小径車・折りたたみ自転車の楽しみ方やカスタマイズを紹介する章、小径自転車オーナーが語る様々なエピソード、そして「まるまる和田サイクル」な3部構成の予定だ。
四六版で巻頭一部カラーの白黒180ページ、1500円となる見込み。
今日の取材は、第二章に登場する小径車オーナーの一人として、その章を担当されるライターのタグさんとラピュータのY氏と雑談する雰囲気で進められた。
場所は営業中の和田サイクルさんの店内。何度かお店を訪れたことがある方には、常連客がたむろしているように見える光景だったかも知れないが、幸いなことにこの日は日没頃まで客足は途絶えないものの混雑することもなく、自転車談義に花が咲いた。
この本で取り上げられるカスタマーとして僕は役不足。しかし、小径自転車にどっぷり魅せられている方々が多数登場されるとのことだ。あまりに車種と改造例が多すぎて、自宅まで取材へ出掛けたとか、この章だけでもかなり見応え読み応えありそうで、本の完成が待ち遠しい。
話は変わって、来月オーストラリアで開催される自転車ロード世界選手権へ派遣される日本選手団が発表されたが、世界戦代表選考会を兼ねていたはずの全日本選手権に優勝した宮澤崇史選手が代表から漏れていた。
宮澤選手は北京オリンピックでも日本代表として完走を果たし、ツール・ド・北海道やツール・ド・沖縄でも優勝を重ねている。そして今年は悲願の全日本チャンピオンを獲った。
アジア選手権へ派遣されることにはなっているそうだが、選考会に優勝した選手を代表から外すとは前代未聞ではなかろうか。よほどの事情があるとしか思えない。
日本の自転車ロード競技選手のレベルは、世界的に見ればそれほど高くはない。
日本で自転車競技と言えば、多くの人が競輪を思い描く。公営賭博であるため財源が潤沢で選手の年収は比較的安定しており、水準も一般サラリーマンに比べ高い。
それに反し、ロードレースを興行として支える基盤は日本に無く、競輪を財源とする補助事業として選手の育成の場が提供されているだけであるのが実情だ。
専用の自転車や靴、ヘルメットやウェアなどの機材が比較的高価であること、そして、コースの準備をはじめとするレースの運営が大がかりであることや、公道を使った練習が難しいこともあって、中学や高等学校の部活としても取り組みができないでいる。そのため、適正のある人材がロードレースに出逢える機会も少ない。
日本のロードレースが世界的な水準に達するには、構造的な問題を抱えている。
しかし、昨年からフランスのBboxブイグテレコムチームへ加入している新城幸也選手は、UCIプロツアーチームの中核メンバーとして着実に実績を重ねている。二年連続で世界最高峰の自転車ロードレースであるツール・ド・フランスの出場メンバーに選抜され、完走は勿論、アシストとしてチームのエースをサポートし、さらにUCIプロツアーポイントも獲得した。
今年はジロ・デ・イタリアでもステージ3位に入るなど、日本人でも世界レベルの自転車ロードレースで充分に活躍できることを知らしめている。
同じくUCIプロツアー選手の別府史之選手も、昨年はツール・ド・フランスの最終ステージで敢闘賞を獲得するなどの活躍を見せている。
自転車ロードレースをめざす者達の目標に足る選手が、日本人から生まれるようになった。
そんな中、日本の自転車ロード競技では、世界戦代表選考会で優勝した選手が充分な説明もなく選外とされてしまう。
一般常識からすれば、それは詐欺と誹りを受けても仕方がない行為だ。それがまかり通ってしまう組織に、一時でも人生を預けようと思う選手がどれほどいようか?
代表選考を、そして日本における自転車ロード競技の将来を、あまりにも軽く考えているとしか思えない。
近代の自転車ロードレースはチーム競技であると言える。しかし、世界選手権にしろオリンピックにしろ、国別の出場選手人数は前年のUCIポイントなどで決まるため、欧州で活躍するプロ選手が多い国々は9名近い選手を出場させられるのに対して、日本は男子エリートで3名しか出場させられない。
自転車ロードレースは個人競技と位置づけられたままであるためだ。だからといって、純然たるチーム競技でもなく個人競技である側面が残っている以上、仕方のないことなのだが。
このような状況の中、日本選手団に大きな期待をよせるのは難しい。それでも、スプリンターの活躍が期待できそうな今年の世界戦のコースでは、盟友である新城幸也選手と宮澤崇史選手とが組んで注目を集める結果を実現できそうな気がしていただけに、ファンとしても非常に残念なことだった。
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