STURMEY ARCHER S3X FIXED GEAR HUB
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S3Xは、先日紹介したように、固定ギヤの変速装置という特徴を持っている。
スターメイ・アーチャーは元々イギリスの変速器メーカーであったが、10年ほど前に破綻して精算処理された。競売となったブランド名や生産設備は台湾のサンレース社へ売却され、現在にいたっている。
S3Xは、1950年代に英国スターメイ・アーチャーがリリースしていたA.S.C.というThree-Speed Fixed Hubをリスペクトしたモデルと言われている。
完全なオリジナル設計で、A.S.C.とはギヤ比が異なり、アルミ合金シェルを使って軽量化もされている。
ギヤ比は100%、75%、62.5%の減速ギヤ。
16Tコグを使用している場合、ローで22T、ミドルが20T、トップ16Tとなる。
ウィングナットのリリースが無いのは、とても残念だ。
さて、S3Xはシルバー、ゴールド、パープル、ターコイズ、レッド、ブラックのカラーバリエーションがあるらしい。
今回は、和田サイクルさんが在庫している120mmエンド用のシルバーカラーを購入。
130mmエンド用もリリースされているようだが、ワッシャーで130mmへ対応させるにも十分なアクセルシャフトの長さがあるので妥協した。
専用のインデックス付きバーエンド・コントローラー(シフター)やケーブル小物など、セット販売。
スポークは14番用。少しでも軽量にしたかったので、マビック・オープン・スポーツ・リムに15番で組んでもらった。
尚、S3Xは13番用のオプションもある。
写真のホイールの実測値は、コグやナット類、タイヤ、チューブ、リムテープを除いて1400gだった。S3X単体での重量は、カタログ値で980gとなっている。
ホワイトインダストリーの126mmエンドENOハブを使った、セミディープリムのホイールがタイヤ付きで1450gだったことを思うと、まずまず軽くできている。
スプロケット(コグ)は、シマノ・カセットスプロケット互換のスプラインに対応したギヤを利用する仕様。
サンレースよりS3X用としてリリースされているコグは、シマノ・カセットスプロケット・ハブを持つホイールをシングル化するキットに付属するギヤとほとんど同じものだ。
シマノのカセットスプロケットをばらして、コグとして流用も可能と思われる。
しかし、S3Xを扱う米国の販売店のHPで、厚みが無いギヤを避け、SURLYやWTBブランドでリリースされているスプライン部に厚みのあるものを推奨していた。
S3Xのコグを受ける部分はスチール材ではあるものの、噛み込みによるトラブルを避けるためのアドバイスだろう。
当方では、元々デュラエースのトラックハブで使っていたコグを試用している。
S3Xのコグを押さえるロックリングは1.375”×24tpiとなっていて、スプライン外周に切られたロックリング用のネジを使ってピスト用トラックコグをねじ入れることができる。
トラックハブで使われるロックリング用の逆ネジは無いため、S3X用の正ネジのロックリングで押さえることにはなる。従って、バックを踏むとコグが緩む可能性はある。
チェーンラインを調整するために付属するスペーサーにもスプラインに嵌合する爪があるので、このスペーサーを入れてからトラックコグをロックリングで押さえれば、バックを踏んでもネジが戻りにくくなるのではなかろうか。
尚、S3X用のロックリングは、シマノのホローテック2BB用工具を使用して脱着する。
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ローギヤ | ミドルギヤ | トップギヤ |
付属するバーエンド・コントローラーは、シフター部をバーエンド用のベースから外して汎用の台座へも装着できる。
シマノやカンパなどのレバーと同じ作りだ。
S3Xをインストールしたカレラ・ロールはロードバイクフレームで、ダウンチューブに直付けのシフター用台座がある。
そこへ専用シフターを装着した。
ワイヤーはBB下にシマノのケーブルガイドを装着して、外装変速器用のリアディレーラーと同じように配索した。
当初、チェーンステーにあるRD用のアウター受けを介してワイヤーを通す予定だったが、ケーブルストッパーに干渉して変速ができなくなり、BB下のケーブルガイドから一直線にハブシャフト右端の変速用チェーンを引くようにした。
フレームに変速用ケーブルが干渉することはないが、ペダリング時に踵が干渉することはある。
必要な小物部品なども含め、ほぼ一切を和田サイクルさんが用意してくださったこともあり、インストールはすんなりできた。
ただ、ストレートドロップエンドのフレームでエンド幅も130mmと、規格外の使い方になっている。
加えて、ロールのチェーンステーやシートチューブはタイヤとのクリアランスが極小で、25cなんて太いタイヤしか手持ちになかったからホイールの位置決めに手間取った。
出先でのパンク修理を想像するだけで気が重い(苦笑)。
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さて、サイクルライフナビゲーターの絹代さんと桜を巡る自転車散歩というイベントへの参加も兼ねて、S3Xをインストールしたロールの試走をしてきた。
フロント42t、リア16tをインストールしているので、S3Xと組み合わせて1.9なんてローギヤードはポタリングにとても便利だった。
しかし、頻繁に立ち止まるような自転車散歩なら、キャリーミーの方が断然使い勝手は良いけどね。
正直、42x16tではギヤが低すぎる。3倍辺りのギヤ比で組むのが良さそうだ。
今日のポタリング、そして組み込み作業で気になった点は次の通り。
- 右の写真のようにバッククラッシュが思った以上に大きく、固定ギヤ特有のダイレクト感がスポイルされている。
- 駆動軸に並行するガタ(スラストガタ)が1mmほどもある。和田サイクルさんに在庫品も確認していただいたが、どれも同様なガタがあり仕様だろうと思われる。
- 変速ケーブルの張りが強いと、ローへシフトが入っている時にシフターのインデックスから解除されることがあり、そうなるとギヤ抜けする。
現状、仮組の状態ではあるが、ストドロエンドのロードフレームを使っているためギヤ比を変える余地が少ないので、このまま乗ることになりそうな予感。
ローギヤードを活かして、山坂道で楽しんでみようと思っている。
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