Pacific Carry-me デュアルドライブ その2
Pacific Cycles Inc. Carry-me DSについて、特徴をメモ。
概要
Carry-meは台湾のパシフィックサイクルが設計製造している極小径折り畳み自転車。
ZEROBIKEと同じMAXXISの8インチタイヤを採用し、独自の折り畳み構造でスティック状にフォールディングできる。
ベビーストローラーを折り畳んだサイズとほぼ同じ容積に収納可能で、フレーム一体の荷台端に付いた二つの小輪とリアタイヤで3点設置させることで、ベビーカー同様に縦に自立させられる。
また、その状態で転がして移動することもできる。
7005アルミを多用して、実測車重8.15kg(ペダル含む、マッドガード,オプションキャリアは含まず)と軽量に作られている。
伸縮範囲の広い可変ステムとシートポストを採用し、多様な体格に対応できる設計となっている。
体重85Kgまで、身長は150cmから185cmとなっているが、シートチューブがやや短いため、標準の350mmポストと厚みのあるゲル入りサドルとの組み合わせであっても、身長175mm程度までしかスポーツライドに適したポジションは出せない。
自転車では一般的ではない1/4インチピッチのローラーチェーンをドライブトレインに採用し、多歯化によるチェンリングの大口径化を回避している。
尚、1/4インチピッチローラーチェーンはJIS呼び番号「25」、 6.35mmピッチのチェイン。
発動機のカムシャフトやポケバイの駆動用がこれ。
日本ではOX PocketならびにLOUIS GARNEAU LGS-CMとしてCarry-meの初期モデルがOEM供給されている。
これらOEMモデルはカラーバリエーションの違いの他、フロントフリーであったり、チェンリングが100tでリアコグが16t(LGS-CM 2006 modelはフロント90tらしい)であるなど、現行Carry-meとは仕様が異なっている。
次に、初期モデルとの主な違いをあげる。
1.リアフリー
フロントフリーが改められ、専用設計のアルミホイールの採用と共にリアフリー化された。
併せてコグも14Tとなっている。
HB-6も専用フリーだったが、それに比べると作り込みはイマイチ。
フリー部がオープンタイプでシールされていない。ラチェットが外から見えるため、砂などの混入で爪の摩耗が心配。
しかし、滑走時にチェーンが止まっているメリットは大きい。
フォールディングハンドル
クランプ方法に変更は無いが、分割ハンドルを繋ぐゴム紐と位置決めノッチが廃され、専用のナイロンロッドをセンターボルトでクランプチューブに固定する方法へ変わっている。
そのため、折り畳んだときの収まりは良い。
センターボルトはナット固定で、ナット側はステム突き出しの中空部に逃がされている。
しかし、皿になったボルトヘッドはステムバンドに干渉するため、ステムバンド内側がざぐり加工されている。
ステムを交換する予定の方は注意。
ハンドルバーノッチが廃されたので、バーエンドバーを後付けした場合、ハンドルクランプをOEMモデルよりも強く締めないとバーが回ってしまうかも知れない。
当方はドロップハンドルバーに換えているが、強めに締め付けしていないとずれてしまうことがある。
ハンドルバーの表面処理は弱いようで、100kmほど乗ったら嵌合部が傷だらけになった。
KOMAのハンドルバーの様に、硬質アルマイト仕上げにして欲しかった。
ウレタングリップが採用され、ブレーキレバーはシティサイクル用の安価なものに変わりアウター受けの調整ダイヤルが無くなった。
Speed Drive
Carryme DSモデルは、ATS社のSpeed Driveがインストールされている。
台湾ATS社がスイスSchlumpf社から正式にライセンスを受けて製造しているもので、ダイレクトモード1:1、スピードドライブモード1:1.65のBB一体型2段変速器。
ドイツ生産のSchlumpf社オリジナルとの性能ならびに仕様の違いは不明。
Carryme DSでは、Schlumpf Speed-driveでオプション扱いのイージー・シフトプレートも、ATSブランドのものが標準搭載されている。
尚、チェンリングも5穴PCD110の専用品で、歯数はノーマルモデルと同様の84T。
クランク長は170mm。(ノーマルモデルは160mm)
また、Speed-drive化によって650gの重量増。車重は実測で8.8kgとなっている。
フォールディング固定部
Carry-meはフロントフォークとフレーム、シートチューブとフレームとをそれぞれワンタッチに固定するための装備が追加された。
シートクランプのクイックリリースレバーがフレームフックに掛かってシートチューブが固定されるなど、構造もスマートだ。
折り畳まれた状態でステアリングもしっかり固定されるようになり、ステムを掴んで転がしながらキャリーしやすくなった。
フロントフォークのキャスター角
Carry-meシリーズはアルミフォークが採用され、鍛造?エンドを熔接している。
HB-6などは鉄フォークに潰しエンドだったので、価格相応に凝った作りだ。
OEMモデルがフォークに対してよりキャスター角がつくように斜めにエンドが熔接されているのに対し、現行Carry-meはほぼストレートに熔接されている。
フォーク自体のキャスター角も違う様に見える。トータルでは同じトレール量になっているのかも知れない。
尚、アルミホイールのデザインが変更され、フロントハブは中空軸が採用された。
エンド幅を計っていないが、クイックレリース化は容易だろう。
残念ながらリアハブは従来通り。
ブレーキが写っていないけど、前後共にシングルピポットのアルミ製キャリパーブレーキが採用されている。
デザイン、品質共にZEROBIKEのものとほぼ同じ。
リアブレーキは下引きでワイヤーの取り回しが右側であるなど、専用品と思われる。
シューの性能はまずまずで、ZEROBIKEやHANDYBIKEがシュー交換必須だったのに対し、Carry-meは実用的だった。
フロントキャリア台座
アルミ製フォールディングタイプの専用フロントキャリア取り付け台座がヘッドチューブに追加された。
ネジ穴がボトル台座と同じM5なので、ミノウラのパーツなどを組み合わせてボトルホルダーをポン付け出来たりする。
ヘッドチューブクランプの形状も変更された。
クイックレリースが廃されて蝶ネジへ変更。ここは構造上あまり強く締める必要がないので、変えたのだろうか?
尚、フレームは7005アルミとなっているが、シートチューブやヘッドチューブ、フォークの他、ラダー形状のシートチューブステイもヘッドチューブステイもアルミ製。
フレーム一体のキャリアやシートポスト、ハンドルポスト、ステムもアルミ。ステムの引き臼から棒まで軽合となっている。
小振りのサドルはVELO製のコンフォータブルなもので、クッションが厚く2時間程度までなら尻も痛くならなかった。
重さも300g程度だと思う。意外に軽いサドルだ。
格好の良い軽量サドルへ換えたいところだけど、ボクの場合シートポストを一杯まで伸ばして何とかポジションが出ている状況で、シートレールと座面との距離が小さくなる軽量サドルを使うには、シートポストもより長いものへ換える必要がある。
また、自転車では標準的な1/2インチ(12.7mm)チェーン化については、フロントチェンリングを大径化するとチェーンがチェーンステイに干渉するため難しいと思える。
例えばZEROBIKEのリアホイールを流用した場合、リアフリーは最少で15Tまで。
84Tx14Tのギヤ比に近いものとするには、フロントを90Tとする必要があって現実的ではない。
加工して13Tのフリーコグを付けられたとしても、78Tが必要だ。
Carryme DSはスピードドライブ付きなので、入手性の良い60Tを使っても実用的なギヤ比を得られるだろうが、チェーンがリアホイルのステイに干渉することは避けられないだろう。
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