長女H氏を学校から迎え、宿題を終わらせてから次女Y氏同様に母へ預けた。
今日は終日子供たちの面倒を見る時間があるそうだ。
ツイている。
そろそろ16時になる頃、病院へ戻ることができた。
既にお隣の分娩台では赤ちゃんが産まれている。
みーちゃん氏はと言うと、陣痛の真っ最中だ。
11時から投薬が始まった促進剤で、15時頃から本格的な陣痛がやって来たらしい。
既に頻度も高まっていて、途中から助産士助手の方が出産準備を始め、代わってボクが背中をさすったりしていた。
「もうお産やめる」の言は切実だった。
酸素吸入開始。
陣痛の頻度は相変わらず、40分ほど経ち、姿勢を変えてからドプラ心拍数計がアラーム音を幾度も発するようになった。
ドプラ心拍数計は胎児の心拍数を検知するセンサーだが、母体の腹部にプローブを貼り付けて胎児の心音を探知してカウントしている。
陣痛(お腹の張り)計と対になって数値を記録紙へ折れ線グラフで描画し、その波形でお産の状態をリアルタイムで的確に知ることができるらしい。
ドプラ心拍計のセンサプローブと胎児との位置が変わるとすぐにセンシングできなくなる。
こいつのアラーム音はしょっちゅう聞いていたので気に留めていなかったが、助産士が慌てて担当医を呼んでいる。
今回のアラームは胎児の心拍数低下を知らせるものだったらしい。
説明表示によると、お産時の胎児心拍数基線は110~160bpmが正常値なのだが、80~90bpmまで低下している様子。
担当医師が来て診察。
子宮口開大度は7cm程度。胎胞が認められるも子宮口が硬かったのでマイリスの使用を指示した模様。
胎児心拍数基線が100bpm台へ。正常とは言えないが、回復傾向にあるか。
帝王切開も視野に入れて、段取りを始めたらしい。
数分後、再び胎児心拍数基線が90bpmを割る。
担当医師がそのまま出せるか緊急手術かの判断をするための診断を行った。
子宮口の開大がなかなか進んでいないらしいが、児頭は見えているとの事。
「あれ?破水しているみたいだぞ」って、誰も気付かないほど微量だったのか…。
どうも破水して胎児は下がってきたが、子宮は充分開かないから圧迫されているらしい。
吸引の準備と併せて、ストレッチャーの指示等々。
と、みーちゃん氏が突然息みだし、あっという間に児頭が露出。
助産士が慌ててサポートに手を出した途端、ぐるりと時計回りに半回転しながら赤ちゃんが産まれた。
彼は臍帯を首に巻いていたが、幸い締まってはおらず、すぐに助産士が首から外して処置。
元気に産声を上げている。
小児科医の診断も、いたって正常というもの。
あまりのスピーディな展開に、産室の緊張は一気に弾けて、みな安堵の笑い。
担当の先生はちょっとしたナチュラルハイ状態で、結果よければすべて良しって事でを連発していたな(苦笑)。
担当医に言わせると、あの状態でこれほど上手い具合に出産できたのは非常に珍しいケースらしい。
三人目であることや、3000g程度の小さめの赤ちゃんだったのが幸いしたのかな?って感想だった。
次女Y氏の時の様な酷い出血もなく、産後もかなり楽な模様。
赤ちゃんはこの上なく可愛いが、お産はもうお仕舞いと言うのが実感だろうけど。
みーちゃん氏は陣痛に苦しむ中、不穏な雰囲気でかなり不安だったと思うが、産後はすぐに笑顔が戻った。
お疲れ様でした。
新生児は、出産から二時間は分娩室で母親と過ごす。
彼は産声の後は泣くこともなくおとなしい。そう言えば、長女も次女もこんなだったか。
面差しは長女H氏に似ているな。性格は、どんな子に育つのかな。
スキンシップを重点に、出産後できるだけ早く母乳をあたえる指導をされているそうで、やってみたところすぐに乳首をくわえて吸いだした。
なかなか器用なようだ(笑)。
ともあれ、母子共にいたって健康。
先生の言ではないが、結果オーライである。って、ホント男親は気楽なものだ…。